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Practical Diabetes International,May 2003 Vol.20 No.4
低量炭水化物・低量インスリンを基本とした療法―1型糖尿病患者としての個人的な経験から
ロン・ラーブ
概略(Summary)
この章では、私が1型糖尿病を管理するために少量炭水化物・少量インスリン・少なめのたんぱく質・適切な量の脂質を実行する前と後について述べます。ニューヨークの糖尿病センターがこの療法を専門に研究し、この章はその研究に基づいており、1998年7月よりこの療法を応用し実行してます。この療法の合理性のアウトラインと、この療法の利点を示し、同時に多量炭水化物・多量インスリン療法への反論を示します。
これらは、私の個人的な見解であり、私が所属する組織の見解ではありません。
Copyright © 2003Ron Raab
序章 (Introduction)
私は1957年6歳の時に1型糖尿病と診断され、1日1回のインスリン注射が1959年には、1日2回に増えました。1984年には1日3回に、そして1994年から1日4回に増えました。
1980年から血糖の自己測定を初め、それ以前は尿糖を測定していました。現在では、1日4回血糖測定をしており、週2~3回適度な運動もしています。
私は、幾分、網膜症と神経障害があり、空腹感を覚えるまでに時間が掛かります。少量炭水化物・少量インスリン療法を始めるまでは、これらの症状は悪化しつつあり、大きな懸念の材料でした。私は、血糖値のレベルを良好にするために全力を尽くし、当時の糖尿病協会、糖尿病療養指導士、そして食事療法士から低GI値の炭水化物多量に摂取するように指導されました。しかし、継続的に血糖値を正常値に近づけることはできず、結果として、より深刻な高血糖に見舞われることになりました。当時の指導は、効果が無かったのです。
低量炭水化物食事の計画(Low carbohydrate food plan)
1998年、私が接した様々な情報から他の療法に気付きました。-低量炭水化物・低GI値の食事がインスリンの量を減らすことになり、たんぱく質の摂取を選択すると言うことです。この療法を研究しているニューヨークの糖尿病協会にも行きました。同協会の所長リチャード・バーンスタイン博士は、1型糖尿病歴50年です。博士は、多くの実験を行い、この食事計画を何年も前に採り入れ、博士自身の糖尿病のコントロールが劇的によくなったと報告しています。私もこの療法に興味を持ち、炭水化物の摂取量を減らし、数年にわたって様子を見ましたが、私の血糖値の状態は改善されました。まだ結果に懐疑的な面が残り、模索し続ける一方で、このことは、私に更に別の食事計画の模索を動機付けることとなしました。私は、バーンスタイン博士の著書とインターネットのサイト(http://www.diabetes-normalsugars.com/)、ニュース、個人的な報告における正常HbA1cにとても惹かれました。低量炭水化物食事療法は米国、その他でも数多く考察され、糖尿病関連の出版物や会議においても、ますます議論される方向にあります。
私は数多くの実験をし、1998年7月以来1日の炭水化物の摂取量を減少させ、2000年には200グラムから30~50グラムへと減らしています。摂取するものは、全て徐々に吸収されるものです。
私は、この食事療法を過激とも一時的な流行とも思ってませし、更に極端な高たんぱく質や高飽和酸脂肪療法といった療法によって否定されるべきものでもないと思っています。
結果(Results)
私のインスリン注射量は、55%減少し、1日16単位となり、HbA1cは33%減少し5.6%まで減少し、さらに良くなっています。1日の血糖の変動は以前よりも、あまりありません。低血糖については以前より深刻ではなくなり、たった3グラムから5グラムの砂糖で血糖値は正常値へと簡単に戻ります。多量の炭水化物・多量のインスリンを使用していた頃のように大きな変動はなく、回復までに時間がかかることもありません。
体に良くない脂肪を取り過ぎないということに焦点を当てた、この療法を始めてからの4年間、私の体重は84kgから72kgまで下がり、BMI値も正常値内、網膜症も落ち着いた状態、血圧も正常値、血中脂肪も正常値又は許容範囲内で収まっています。体重減少に伴って、尿中にケトン体が排出されましたが、これは問題ではなくインスリン不足で引き起こされるケトアシドーシスとは異なります。
重要なのは、私の空腹感があまりなくなったことです(インスリンは空腹感を刺激し、この療法は結果として少量のインスリンで済みますので)。私はさらに動機付けられ、あまりストレスを感じることもなく、私の主観的な生活の質も見通しも大きく改善されました。そして、適度な運動も規則的に続けています。
理論的根拠(Rationale)
毎日の炭水化物摂取量を減らすことは、多くの点で理に適っています。血糖値を不安定にする食物を多く摂取することは理論的ではありませんし、また、より多くのインスリンが必要となりますし、さらに問題も大きくなります。血糖値のコントロールに関して、炭水化物を大量に摂取することが少量摂取することよりも良いと言う証拠はありませんし、一般的に支持されているわけでもなく、促進されている訳でもありません。
バーンスタイン医師と専門家である彼の同僚達によれば、また腎疾患は、高血糖よりもたんぱく質の過剰摂取の結果として生じるようにも思われます。一般的な原理原則もまた2型糖尿病を引き起こします。
炭水化物を摂取すればするほど、血糖が上昇すると言う結果も予想不可能な血糖上昇の機会もますます増えます。これは、コントロールできない火に油を注いでいるようなものです。また、インスリンの吸収が注射をする部位によっても、また注射をする時間によっても、まちまちであることも分かっています。このインスリンの吸収は、インスリンの注射量が増えるにつれて、ますます安定しなくなります。従って、低量の炭水化物を摂取し、それに合う形でインスリン注射量を減らす方法に比べ、多量の炭水化物摂取に伴い、インスリンを多量に注射する治療法では、血糖値がますます不安定となり、予測不可能なものとなることは確実です。
驚いたことに、米国糖尿病協会、オーストラリア糖尿病協会をはじめその他多くの団体でも食事療法におけるアドバイスの暗黙の了解となっているのです。米国糖尿病協会では、炭水化物を含む食品は、血糖を急激に上昇させ、血糖上昇は食物に含まれる糖質がどの程度の割合で消化されるか、また完全に消化されるかにもより、これは多くの要因に影響されます。このことは、糖質の含まれるものを食事において摂取すればするほど、結果として、潜在的に血糖値がますます不安定になることは明らかです。しかしながら、論理的には低量炭水化療法が薦められるよりも、実際には反対のことが進められ、摂取カロリーの60%までも、一人当たり1日300グラムにあたる炭水化物で摂取するように指導されてます。
その上、明らかな誤りが多量炭水化物摂取から生じます。例えば、奨励される高血糖治療よりも絶対的な炭水化物が食事の中で20%の不安定要因(つまり、20グラムの炭水化物)が増すことになります。20%の不安定要因は、たった数グラムの炭水化物にしか相当しないため、このような不安定さは低量の炭水化物しか含まない食事では、生じません。
神経機能が鈍化する(糖尿病合併症の神経障害の一つ)ことによって空腹感を感じにくくなったり、不定期に空腹感を感じる症状(胃腸神経麻痺)は、不安定で予測不可能な血糖の状態となる機会がさらに増加します。医療関連資料は、1型・2型双方の糖尿病患者の50%にこれらの症状が見られることを示しています。このことは、多量に炭水化物を摂取することに伴って、血糖値がより不安定となる結果となります。多量の炭水化物が胃に残る時間は一定ではなく、予測不能であったり、非常に急激な消化過程や空腹が急激に血糖値を上昇させる結果となります。胃腸神経麻痺は、多量の炭水化物を摂取する食事と胃の中に炭水化物が残ることに対応して、インスリンを多く注射することが低血糖のリスクも高めます。
(多量炭水化物摂取が暗に意味する)多量のインスリン注射と心臓を含む血管系の疾病や、その他のあらゆる要因とを関連付ける証拠が今なおあります。
また、食後の急激な血糖上昇が糖尿病合併症を引き起こすと言う証拠もますます多くなっています。これは、HbA1cの値が仮に良好と思われても多量に炭水化物を摂取しそれに伴って多量にインスリンを注射する治療法では低量の炭水化物を摂取しインスリンも少量に押さえる療法よりも血糖値が不安定となり、合併症を引き起こす機会が更に増えることにつながります。
食事(Meals)
12グラムの炭水化物と120グラムのたんぱく質を含む好ましい食事の一例として、
・ スープストックからつくるスープ
・ ガーデンサラダ
・ 中サイズのステーキ、魚、野菜のいずれかからのたんぱく質
・ 火を入れた野菜(イモ、パスタは含めない)
・ 少々ミルクを入れたコーヒー
私は、米国の代謝・肥満研究所(Metabolic
and Obesity Research Laboratory)のチーフとボストンメディカルセンターの医学・生化学の教授に相談しています。彼女はこれらの療法の根拠を支える、低量炭水化物、適量のたんぱく質、適量の脂肪を摂取する療法の性質とこれらの割合に関して根拠は見られないと述べています。この療法を栄養面から完成させる方法を作成することは、容易です。
私は、教授達のような専門家たちからたんぱく質と脂肪は必須の栄養である一方で炭水化物は必須ではないことを学びました。身体は、たんぱく質から炭水化物を作ります。特に外から食物として取り入れる炭水化物は、低量か存在しません。身体はこのような炭水化物を時間をかけて生成し、低い値のGI値を示し、通常のインスリンの状態に合わせていきます。実際にまたは最終的に摂取するたんぱく質の約10%がこのように炭水化物となるのです。例えば、多量の炭水化物を含む食品を摂取しても、果物や野菜をを摂取すればビタミン類やミネラル類を摂取できるというような他のメリットを得ることができないのです。あくまで、ここで述べる療法は、低量炭水化物を意味しているのであって、全く炭水化物を摂取しないことではありません。
反応(Reactions)
私は、多くの専門のヘルスケア関連の集会やオーストラリア・英国・そして日本の各糖尿病協会から招きを受けて自身の個人的な経験から得たこの療法を公表して来ました。2000年8月には、オーストラリア糖尿病ソサエティ、オーストラリア糖尿病療養士協会年次サイエンティフィック集会のシンポジウムにおいて、炭水化物―もっと摂取すべき?それとも・・・という題でプレゼンも行いました。
このプレゼンに続いて、私の近所の内科医であるリチャード・アーノット医師は、「ロン・ラーブ氏のHbA1cは、劇的に改善し、以前起こしていたひどい低血糖も落ち着くようになり、脂肪についても許容範囲です。この療法について、より詳しい研究が必要とされています。恐らく、今まで固く信じられてきた定説を疑う時期かもしれません。」ということを多くの参加者達に話しました。
糖尿病ケアに尽くしたということで、オーストラリ政府から表彰された糖尿病専門家であるポール・モフィット教授から、プレゼン後に「私は、低量炭水化物療法の効用を強く信じますし、また長年実践してきました。」と手紙が送られてきました。
この療法に対する一般的な反応は、普通の人には極端すぎるし、難しすぎるので受け入れられないというものです。私が思うに、最初は難しくてもライフスタイルを根本的に変えたことが、このうえない幸せとなりまたこの上ない良い結果をもたらしているのです。多くの人は、効果的に正常の血糖値を維持できる1日の総炭水化物摂取量30グラムを減らすことを望まないかもしれません。インスリンをそれぞれの状態に合わせて適度に調節するのであれば、例えば、(1日4回食事をするとしても)食事ごとに20グラムの炭水化物を摂取することで、驚くほど、目に見えて改善されるのです。
結論(Conclusion)
ここでは、多量に炭水化物を摂取する療法を比較することで、低量炭水化物療法の利点を血糖値だけではなく他の効果も得られることを示そうとしてきました。まとめると、少量の炭水化物の摂取によりインスリン注射量が少なくて済み、血糖値の値が予測しやすくなり血糖値のバラツキが少なくなるということです。
参考文献(Bibliograhy)
1.Bernstein RK Dr.Bernsteins Diabetes
Solution. Little,Brown & Co,1997.
謝辞(Acknowledgements)
バーンスタイン医師を初め、私がこの療法に注目する方向に導いてくださったその同僚の方々に感謝の念を示します。
Ron Raab ,BEc,President,Insulin For Life
Incorporated, Australia
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